一眼デジカメを使ったアルゴルの測光観測

IRISとDigphot2を使った測光方法
17/Apr/2009

一眼レフ・デジタルカメラを使って撮影したペルセウス座の画像からフリーソフトのIRISを使ってアルゴルの測光を行い良好な光度曲線を描く事ができたので報告します。

撮影は神奈川県茅ヶ崎市の鈴木節雄さんが自宅ベランダで行いました。カメラはCanon EOS 40Dです。これを赤道儀にのせて自動追尾しています。カメラ設定はf28mm F4.0 ASA800で30秒の露出で撮影しました。画像はRAW形式で保存しています。

ガイドしている点とRAWで保存した事によって良好な結果となりました。

これが撮影された画像のひとコマです。四分の一に縮小してあります。ペルセウス座の全景の他にスバルとさんかく座・アンドロメダ座の一部が写っています。

RAW画像には撮影時の情報も記録されています。焦点距離、ASA感度、露出時間の他に撮影開始の日時も記録されます。撮影開始(観測開始)の前にカメラの時計を合わせておく必要があります。

連続撮影が終わったら測光します。測光の前に星図が必要になります。変光星図です。

通常、比較星等級にはV等級を使いたくなります。しかし、測光用フィルターを使って撮影していない場合はVt等級を用いると良好な測光結果が得られます。Vt等級の星図をvt_chart.htmに載せました。

これはアルゴルを中心とした25度角程度の星図です。比較星等級はVt等級を記入してあります。

Vt等級はステラナビゲータで調べることができます。ステラナビゲータで星をクリックすると天体情報が表示されます。そのウインドウ内にVT=5.678などと表示されます。

RAW画像と星図の準備が出来たら測光の作業を行います。測光にはIRIS ver5.55を用いました。IRISはhttp://www.astrosurf.com/~buil/us/iris/iris.htmからダウンロードできます。

IRISを起動したら上図のようにRAW画像を読み込みます。File→Load a RAW file... でファイルを開きます。IRISでの測光方法はd-cam_obs2.htmも参考になります。

次はIRISでの測光方法です。

Analysis→Aperture photometry...を選びます。するとAperture photometryウインドウが開きます。

設定はこの通りがよいでしょう。ただ、設定後に星をクリックした時に内側の円内に収まらない場合はRadius1を大きくして下さい。また、Radius2,3も大きくする必要がありますが、おおよそ同じ比率で大きくしてみて下さい。

OKを押してAperture photometryウインドウを閉じます。ここから実際の測定になります。慎重にマウスを星に合わせてクリックします。

これで一つの星の測光が出来ました。結果はOutputウインドウに表示されます。この例では、Magnitude = -12.945が測光結果です。

その後は、次々と比較星をクリックして行きます。

Digphot2を活用するためには比較星を測光する順番を毎回同じにすると良いでしょう。細かくなりますが、私は οPer→ξPer→εPer→λPer→μPer→48Per→δPer→αPer→ιper→κPer→πPer→12Per→γAnd→βTri の順に測定しました。ここで説明する方法では測定する順番を決める事が必要です。

一通り測定が終わるとIRISのOutputというウインドウに測定したLOGがその順番で残ります。

これを Edit→Copy するとクリップボードにLOGをコピーできます。これをDigphot2へペーストします。Digphot2はここからダウンロードできます。

順に操作を説明します。

まず、Digphot2を起動します。そして、比較星のカタログ値の所に測定した順にVt等級を入力します。私の場合は、οPer→ξPer→εPer→λPer→μPer→48Per→δPer→αPer→ιper→κPer→πPer→12Per→γAnd→βTriの順に入力しました。

入力は測定した順番で無ければなりません。ご注意を!

次にIRISのOutputウインドウよりEdit→Copyをします。Outputウインドウに表示されている物がクリップボードにコピーされます。

Digphot2の右側のエリアにマウスを移動させて右クリックで「貼り付け」をします。

このようにOutputウインドウのデータがコピーされます。

比較星測定値のボタンを押します。すると比較星の測光値に測定結果が反映されます。

次にIRISで変光星(アルゴル)の測光をします。Outputウインドウの最下部にあるMagnitudeがアルゴルの測光結果です。この値をDigphot2の変光星欄の測定値に手入力します。この例では-13.748です。

そして、測光ボタンを押します。変光星の等級と測光エラーが算出されます。この例ではアルゴルは2.79等で測光エラーは±0.08等となりました。この値はメモして下さい。

Digphot2を使うに当たって測光結果のレビューをすると測光精度が上がります。そのために、直線性を確認します。測光値と比較星等級をグラフにして近似直線から測光値がどれ程離れているのか見ます。その差の標準偏差が測光エラーになります。

比較星の測光値を入力したら比較星グラフのボタンを押します。すると比較星グラフが表示されます。比較星の測光値とカタログ値をグラフにした物です。

RAWで撮影してVt等級で測光するとエラーを0.1等以下にする事ができます。もし、0.1等以下にならない場合は、フィルターを付けずに測光しているので選択した比較星が不適当と考えて、0.1等以下となるような比較星を選びなおすようにします。

この様にして比較星の選定ができたら、以降は同じ比較星を使い続けます。

次は観測時刻を求めます。

IRISのメニューでFile→Image info...とします。

撮影時の諸データが表示されます。今回の観測に使用したカメラはUTで時刻が記録されます。15時04分37秒が露出開始時刻です。観測時刻は露出中央時刻にする必要があります。露出時間が30秒ですので、半分にした15秒を足し算します。結果は、15:04:52となります。JSTにする場合は9時間を足し算します。24:04:52となりました。天体観測では観測の途中で日付が変わると後々の処理で不都合が出てきますので24時制ではなく30時間制を使っています。従いまして、このままの時間を使って下さい。結局、観測は 2008年11月20日24時4分52秒にアルゴルは2.79等だった事になります。

次の画像を読み込んで測光作業をする前にOutputウインドウとDigphot2の比較星測光値エリアを以下のようにクリアしておきましょう。

IRISの方は、OutputウインドウでEdit→Eraseをします。

Digphot2の方は、比較星測光値エリアでマウスを右クリックし「すべて選択」にします。次に右クリックし「削除」をします。これでスッキリとクリアされました。

撮影した画像が100枚でしたら、この作業を100回行います。

今回は168枚の画像からアルゴルの測光を行い、以下のような光度曲線が描けました。この結果、正確な極小時刻が求められアルゴルの公転周期変化を知るための有益なデータを得ることが出来ました。


IRISによるPSF測光:IRISとDigphot3を使った測光方法

27/Jul/2009

IRISを起動してRAW画像を読み込む所までは上で説明したAperture Photomertyと同じです。

PSF測光をしますのでIRISの操作方法が違います。

測光結果のLOGがIRISのOutputウインドウに残ります。ここも同じです。ですから以降の操作も同じになりますが Digphot3を使って下さい。

Digphot3はAperture測光とPSF測光の両方に対応しています。また、16bit版と32bit版の両方を用意しました。32Bit版の利用にはVisualBasic Ver5のランタイムをインストールする必要があります。Digphot3はここからダウンロードできます。

それでは、PSF測光のところだけ説明します。

まず、このように測定したい星をマウス左ボタンで四角く囲みます。

そのご、右クリックして PSF を選択します。

PSFが表示されます。

Outputウインドウが開いていない場合は、メニューのAnalysisからDisplay data...をクリックします。

このように Outputウインドウ が開きます。
あとは上で説明した方法と同じで、Edit→CopyでクリップボードにコピーしDigphot3へペーストします。必ずDigphot3を使います。


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