コンパクトデジタルカメラによる変光星の観測 -その2-

(2008/9/4)

2007/11/25にデジタルカメラによる変光星の観測を公開しました。そこで示した方法は手順が複雑で普及には問題の多い方法でした。

今回はFreeの天体画像処理ソフトIRISと自作の測光支援ソフト(digphot)の2つだけでJPEG画像から天体測光を行う方法を紹介します。

IRISは、ここからダウンロード出来ます。http://www.astrosurf.com/~buil/us/iris/iris.htm

また、IRISはRAW画像の読み込みも出来ますので一眼デジカメの方はRAW画像を測光に用いる事をお勧めします。(JPEGは圧縮してあり天体測光には適していません)

観測には時刻を知る必要があります。ここれは、JPEGのファイルスタンプを使います。ファイルのプロパティを見ると「作成日時」があります。これを使いますが、30秒露出の場合はこの時刻から15秒を減算したものが露出中央時刻になります。面倒ですが手計算で観測時刻を求めて下さい。

測光は以下の手順で行います。

まず、IRISを起動してJPEG画像を読み込んで下さい。

この画像は2008/1/5にδCepを観測するために撮影した物です。この画像を使って測光の方法を説明します。ここで説明する測光方法を実習したい方はこの画像を用いるのも良いかと思います。(画像上でマウス右クリック、名前を付けて画像を保存)

JPEG画像の読み込み手順は以下の様になります。

次は測光をします。

これはカシオペア座です。このまん中の星を測光してみます。

AnalysisメニューのAperture photometryを選択します。

apertureの半径を10,20,30にしました。他は触りません。Radius1で作られる円内に星がスッポリ納まる必要があります。固定撮影では星が線になります。この線の長さは赤経・露出時間・レンズの焦点距離など変わります。とりあえず、ここで示した値で試して下さい。もし、円に納まらないようでしたら、Radiusを大きくして下さい。(Radius1,2,3の関係は最初はx1,x2,x3にしてみて下さい)

マウスを測光したい星に移動させます。最も内側の円(Radius1)が測光したい星にスッポリ納まる必要があります。マウスの位置によって微妙に測光結果が変わりますがあまり気にしない方が良いでしょう。

マウスの位置が定まったらクリックして下さい。

測光結果のウインドウが現れます。Magnitudeが測光結果です。この星は「-8.848等」となりました。-8.8等と言うと金星よりも明るい事になり妙な値に感じます。しかし、これは相対測光と言う手法ですので絶対値は気にしないで下さい。

この値をメモして行きます。

それでは、この画像を使って比較星の相対測光を行ってみます。それには比較星の等級を知っている必要があります。変光星周辺の星の等級が記載されている星図を変光星図と言います。下図はδCepの観測用に作成した変光星図です。比較星の等級はヒッパルカスのV等級を記入しました。

変光星図を見ながら比較星の測光を行います。下はIRISによる測光結果と変光星図に載っている比較星等級を列挙した物です。

γCep -7.985 3.21
πCep -5.207 4.41
οCep -6.543 4.75
ιCep -7.599 3.50
ξCep -6.540 4.26
αCep -7.851 2.45
ζCep -7.787 3.39
εCep -6.300 4.18
βLac -6.880 4.42
αLac -7.372 3.76

画像中で雲による減光や街灯によるカブリの影響がある部分に比較星がある場合は、その比較星は使わないようにしましょう。また、大気によって星の明るさは減光します。変光星から遠い比較星や、変光星と高度が著しく異なる場合も、その比較星は使わないようにしましょう。

それでは、次は測光支援ソフト(digphot)をダウンロードして下さい。

ダウンロードはこちらから出来ます。測光支援ソフト(digphot)のダウンロード

インストール作業はありません。digphot.lzhをダウンロードしたら任意のフォルダーに解凍して下さい。アンインストールは解凍したファイルを削除するだけです。

digphot.exeを実行すると以下のようになります。

左側の「比較星」という欄に測光結果(測光値)と比較星等級(カタログ値)を入力します。入力に間違いがあった場合は右側の小さい「c」ボタンを押すとクリアされます。

比較星のデータ入力が終わったら変光星の測光値を入力します。

右上の「変光星」欄の「測光値」を入力します。ここでは-7.26を入力しています。そして、「測光」ボタンを押します。すると、変光星の等級と測光エラーを求めて表示されます。変光星の等級はデジタルカメラによる変光星の観測でエクセルによる操作方法で説明している方法で求めています。測光エラーは比較星の標準偏差にしました。

「測光」ボタンを押す度に「平均の算出」欄に変光星の測光値が追加されます。

さて、「平均の算出」欄は何につかうのでしょう。それは、この方法で観測してみると、多数の比較星を用いて変光星の等級を求めても光度曲線を描いてみるとバラツキの多いものになっていました。そこで、複数枚を撮影して平均を求めるようにしています。「平均の算出」欄はその為に用意しました。

観測現場では最大5枚を連続撮影します。 5枚撮影すると(変光星の測光値は)5つの測光値が得られます。 その結果を「平均の算出」欄に入力して行きます。

仮に5つの測光値を入力出来たとします。そして「平均計算」ボタンを押すと平均値と測光エラーを算出し表示します。5つで無くても構いません。平均値は単なる算術平均です。測光エラーは変光星の測光値の標準偏差にしました。

このようにデジタルカメラによる変光星の観測に比べてかなり作業が簡素化出来ました。


測光支援ソフト(digphot)にグラフ機能を追加しました

(2008/10/30)(2009/3/7改版)

「比較星グラフ」と言うボタンを押すと「比較星グラフ」ウインドウが表示されます。マウスをグラフに移動させるとXY座標が表示されます。Xは比較星の測光値です。Yはカタログ値です。

このグラフを見る事で、即座に外れた測光値を見つけられます。そして、怪しいデータをクリアする事で変光星の測光値が改善される事でしょう。

2009/3/7に改版しました。比較星欄の一番下にClearボタンを設けました。測光値の列のClearを押すと測光値だけクリアされます。


コンパクトデジタルカメラ用の変光星図

(2008/9/22)

以下はコンパクトデジカメによる変光星観測専用の変光星図です。

比較星が少ないと測光バラツキが増えてしまうので変光範囲の小さい変光星も比較星に含まれています。比較星に用いた変光星は多数の比較星を用いても測光制度が±0.1等程度ですので変光範囲0.1等以下の変光星を限定しています。また、眼視用の変光星図は赤い星を(あまり)使いませんが、この星図には赤い星も比較星に使われています。コンパクトデジカメ専用の星図である事を理解してご利用下さい。比較星等級はHipparcosのV等級を用いました。


ホームへ戻ります
inserted by FC2 system