デジタルカメラによる変光星の観測

(2007/11/25)

一般に普及しているスナップ撮影用のデジタルカメラで変光星の測光観測を行う方法をまとめました。

しかし、これらの機器は本体に内蔵されている映像エンジン等によりCCDやC−MOSで受光した光が加工されてしまい、そのままの形では取り出せません。また、ユーザーは画像をJPEGで取得するために、更に加工された圧縮画像を扱う事になります。

これによって、画像から明るさの情報を正しく取り出す事は困難です。従って、星のような点光源の明るさの変化を正しく得られる事はありませんが、基本的に明るい物は明るく、暗いものは暗く写ります。その程度の物だと理解して観測に使って下さい。

使用したデジカメはパナソニックのLUMIX DMC-FX30です。

このカメラには「星空モード」という物があり15,30,60秒の露出が選択出来ます。撮影はカメラ三脚に固定して30秒の露出をします。ズームは最大の広角で撮影します。広角にしないと星が流れすぎてしまい測光の際に丸いアパチャーからはみだしてしまいます。アパチャーを広くするとSKYが増えてしまい測光時のS/Nに影響してしまいます。

撮影すると気が付きますが、液晶画面のファインダーは役にたちません。そこで、画用紙でファインダーを作成しました。下のURLはファインダーの作成記事です。

http://binary.cocolog-nifty.com/blog/2007/11/post_8bfc.html
http://binary.cocolog-nifty.com/blog/2007/11/post_8bfc_1.html
http://binary.cocolog-nifty.com/blog/2007/11/post_8bfc_2.html
http://binary.cocolog-nifty.com/blog/2007/11/post_8bfc_3.html

この写真はアルゴルを撮影したものです。実際には画面が3071x2303ピクセルもあり25%に縮小してあります。ペルセウス座以外にも ぎょしゃ やプレアデス・ヒアデスも写っています。

測光は以下の手順で行いました。

1.変光星と比較星の部分をトリミングしてFTIS画像で保存する
2.等級の分かっている星(比較星)を測光する
3.変光星を測光する
4.比較星の測光結果を直線近似する
5.近似した一方程式から変光星の等級を求める
6.測光の誤差を算出する

観測には時刻を知る必要があります。ここれは、JPEGのファイルスタンプを使います。ファイルのプロパティを見ると「作成日時」があります。これを使いますが、30秒露出の場合はこの時刻から15秒を減算したものが露出中央時刻になります。面倒ですが手計算で観測時刻を求めて下さい。

測光には以下のプログラムを使いました。

1.ステライメージ Ver 2.0b
2.マカリ Ver1.3f
3.エクセル

マカリはフリーソフトです。測光の機能があります。新しいステライメージにも測光の機能がありますが、Version2.0bは測光が出来ないので、JPEG画像をトリミングしてFITS画像で保存する目的で使いました。通常、天体測光はFITSと言う形式の画像ファイルを扱います。また、白黒画像である必要もあります。ステライメージは様々な画像ファイルを読み込む事が出来ます。そして、読み込んだ画像をトリミングしたり白黒にしたりFITSで保存する事が出来ます。

では、早速、ステライメージを使ってJPEGをFITSに変換してみましょう。

こんな感じで、変光星と比較星を囲って「編集」「コピー」「新規貼り付け」をします。

ここで切り取った画像のサイズを確認します。「画像」「画像情報」を選択すると画像情報ウインドウが開きます。

画像サイズが1024x768を超えるとマカリでややこしい事がおこります。出来るならば、その範囲以内を切り取りましょう。

次は下の様に画像を白黒にします。

なぜか?マカリは上下反転して表示されます。JPEGから切り出して作ったFITS画像に限ってのようです。

逆さまの画像では星を探しにくい場合は、ここで上下反転を行います。上の図の赤丸の部分をクリックするだけです。

それでは、FITSで保存しましょう。上のように「ファイル」「名前を付けて保存」の順で「画像ファイルの保存」ウインドウを表示させます。必ず、FITS形式で保存して下さい。

FITS保存設定は(他の物でも構わないのですが)32Bit整数にしました。これで、ステライメージは終了します。

これからアルゴル(βPer)を測光するのですが、先に比較星を決めておく必要があります。私は上の星図にある下記の星々を比較星にしました。

α Per V=1.79
γ Per V=2.91
δ Per V=3.01
ι Per V=4.05
ψ Per V=4.32
σ Per V=4.36

比較星のV等級は、Hipparcosカタログから抽出しました。Hipparcosカタログを表示させるには、私のホームページの変光星観測に使えるFreeの星図ソフトが参考になるかも知れません。また、私の持っているステラナビゲータ Ver6もHipparcosのV等級を表示してくれます。注意する点は、V等級でなければならない点です。VTで表示する星図ソフトがありますので、それは使わない方が良いです。

さて、マカリを起動し出来上がったFITSファイルを読み込んでみましょう。

全ての比較星と変光星が写っている事を確認して下さい。もし、欠けていたら、もう一度、最初からトリミングを行ってFITSファイルの作り直しをしましょう。

それでは、測光というリボン(アイコン)が有りますから、それをクリックして下さい。

具体的な測光の操作方法は、私のホームページのマカリィで測光してみよう!を見て下さい。

そして測光は下記の順に行います。

α Per V=1.79
γ Per V=2.91
δ Per V=3.01
ι Per V=4.05
ψ Per V=4.32
σ Per V=4.36
β Per 変光星

このようになりましたか? 最初にαPer付近にマウスを移動させてクリックします。するとαPerを中心に3重の円が描かれます。それと同時に開口測光ウインドウに測光結果が表示されます。このようにして次々と星をクリックして行きましょう。

予定していた星々のクリックが終わったら、開口測光ウインドウの「テキスト出力」ボタンを押します。

測光データはCSV形式で保存されます。

実は、マカリは等級を求めてくれません。スカイを減算したアパチャー内の積分をしてくれます。この値を使って等級に換算するには、マカリィで測光してみよう!の一番下にある「pogson.xls」を使います。ダウンロードしておいて下さい。

pogson.xlsを使う前に、先にマカリの測光結果を抜書きしておきます。先ほど NEW1-Aperture.csv と言う名称で保存したファイルをエクセルで開きます。上の図の赤丸の部分です。下のようになります。

α Per = 4130.61722
γ Per = 1776.70539
δ Per = 1855.81016
ι Per =  615.04460
ψ Per =  564.01659
σ Per =  496.76452
β Per = 1531.12240

次は、αPerを比較星にして、その他の星を測光します。

では、最初に pogson.xls を使ってγPerの等級を求めてみます。

カウント値の変光星のセルにγ Per = 1776.70539を入力します。
カウント値の比較星のセルにα Per = 4130.61722を入力します。
等級の比較星にα Perの等級の1.79を入力します。

結果の変光星等級が2.71になっています。これは、γPerが2.71等級だった事を示しています。

次は、カウント値の変光星の所に、次の星(δPer)の値 1855.81016 を入力します。変光星等級の欄が2.66になります。このように全ての星の等級を求めます。

α Per = 1.79
γ Per = 2.71
δ Per = 2.66
ι Per = 3.86
ψ Per = 3.95
σ Per = 4.09
β Per = 2.87

このようになりました。

上のようにエクセルを使って結果を入力します。そして、上図のように等級の分かっている星から散布図グラフを作ります。横軸はHipparcosのV等級、縦軸は測光結果です。

散布図を作ったら、それを直線に近似して下さい。その時、「グラフに数式を表示する」をチェックして下さい。 すると、近似した一次式も表示されます。結果は y=0.9074x + 0.0856 となりました。 本来は、傾きが1でY軸接点が0になるハズですので、y=xに近い値になるほど良い結果だと判断出来ます。

この一次式から、βPerの等級を求めます。x=(y-0.0856)/0.9074ですから、y=2.87を代入してx=3.068547となります。このようにして、この画像のβPerの等級が3.07等級となりました。

2007年11月22日にアルゴル(βPer)の極小がありました。11枚の画像を撮影して、この方法で光度曲線を作成してみました。

このようにして、アルゴルの変光の様子が捕らえられました。グラフにはエラーバーも一緒に表示しました。

測光エラー算出方法は近似した直線から求めた値と実際の測光値との差の標準偏差を使うようにしています。


2007/11/22のアルゴル観測報告はvsnet-eclに投稿しました。

beta Per observations by Nagai (22/Nov/2007)

object     YYMMDD(UT)        mag     err    code
PERbeta    20071122.44569    2.60C   0.20   Nga
PERbeta    20071122.45524    2.70C   0.32   Nga
PERbeta    20071122.46597    2.75C   0.47   Nga
PERbeta    20071122.46829    2.80C   0.25   Nga
PERbeta    20071122.48049    2.82C   0.28   Nga
PERbeta    20071122.49289    3.01C   0.31   Nga
PERbeta    20071122.50547    3.07C   0.13   Nga
PERbeta    20071122.52997    2.94C   0.18   Nga
PERbeta    20071122.54211    2.97C   0.25   Nga
PERbeta    20071122.55144    2.94C   0.20   Nga
PERbeta    20071122.56123    2.89C   0.23   Nga

Observer   : K. Nagai (Kanagawa, Japan)
Insutrments: LUMIX DMC-FX30 (30sec. exposure)

Comparison star (Hipparcos sequence)
alpha Per V=1.79
gamma Per V=2.91
delta Per V=3.01
iota  Per V=4.05
psi   Per V=4.32
sigma Per V=4.36

minI PERbeta 2454427.014 0.002 Hel Nga n=11 C

beta Per JD(hel)=2454427.014 C=2454426.934 E=3064 O-C=+0.080


     - 22/Nov/2007 beta Per (By Nagai) -
2.5+                                     
   |      *                              
   |        *  *                         
   |           *  *                      
   |                        *    * *     
3.0+                *          *         
   |                   *                 
   |                                     
   |                                     
   |                                     
3.5+                                     
    +--------+--------+--------+--------+
   10       11       12       13       14 (UT)

Kazuo Nagai / PXS10547@nifty.ne.jp ( http://nga-star.o.oo7.jp/ )

デジカメde変光星 2008/3/20


ホームへ戻ります
inserted by FC2 system