EW型食連星のV1073HerとV1097Herの周期変化

(2020/7/31)

VSOLJの測光データを用いて光度曲線を作成している中でV1073 HerとV1097 Herの最近の観測が従来の観測と重ならない事に気がつきました。これは大きな周期変化の可能性を示唆するもので O-C を調べてみましたので報告します。

GCVSでV1073 Herは変光タイプがEWで明るさは11.00等、第一極小は11.69等となっています。周期や元期の記述がありません。V1097 Herも変光タイプはEWで明るさは10.76等で第一極小は11.30等となっています。周期は0.360847日で元期は2452463.4068となっています。

作成したVSOLJの光度曲線を以下に示します。

光度曲線の作成のために用いたLight Elementは下記です。

V1073 Her min=2451746.5126+0.2942801×E (IBVS4975)

V1097 Her min=2452463.4068+0.360847×E (GCVS Ver. 2019 Nov)

V1073 Herの観測はIoh(東京都 伊藤)とSiz(長野県 塩川)が2009年から2016年までに7晩の観測をしています。Iohは30cmシュミットカセグレン望遠鏡にDSI-Proを用いています。Sizは35cmシュミットカセグレン望遠鏡にST-9Eで観測しています。

V1097 HerはIohとSizが2010年から2013年までに6晩の観測をしています。観測装置はV1073 Herと同じです。

これらに加えて2020年6月にMzm(岡山県 水谷)がV1073 HerとV1097 Herを1晩ずつ観測しています。Mzmは20cmリッチクレアン望遠鏡にG2-8300カメラを用いて観測しています。

両方の光度曲線で赤矢印が2020年6月のMzmの観測です。他の極小は同じ位相にあるのに対してMzmの極小がズレている事がわかります。原因の一つには急な周期変化があればこのようになる事があります。

これを知るにはVSOLJの観測だけでは期間が短く過去の周期変化の様子が分かりませんのでチェコのBRNOのO-Cを見てみました。下のO-CはBRNOホームページのハードコピーです。

上がV1073 Herです。Third bodyが有るようでLTEでO-CがSin波になって見えます。下はV1097 Herです。大雑把に見て質量移動の影響による放物線のように見えます。このO-CにはVSOLJのIohとSizの観測も含まれていました。これにMzmの観測を追記すれば最近の様子がわかると思われます。

上図が作成したV1073 HerのO-Cです。O-Cの算出にMin=2452500.155+0.2942823×E (Cracow 2020iii)を用いました。オレンジの丸はIohとSizの観測です。最後の赤丸はMzmの観測です。あまり意味はありませんが6次の関数でフィットさせた近似曲線も作成しました。

こちらも基本的にはThird bodyによるLTEの影響でカーブが波打っています。Mzmの観測したO-Cはその波の影響で大きくなっているようです。ただ、それの効果を上回る何かが無いとピッタリとは重ならない感じです。O-Cは全体に右下がりになっているか、大きな放物線になっているようにも見えます。この大きな放物線にThird bodyのLTEが加わればMzmの観測と一致するのかも知れません。今後の観測が期待されます。

上図が作成したV1097 HerのO-Cです。O-Cの算出にMin=2452500.189+0.36085×E (Cracow 2020iii)を用いました。オレンジの丸はIohとSizの観測です。最後の赤丸はMzmの観測です。こちらもあまり意味はありませんが4次の関数でフィットさせた近似曲線も作成しました。

こちらは僅かにSin波のような振動が見えているようですが、全体を見るとおおむね放物線になっています。この観測だけで放物線を作ってもMzmの観測と重なりません。今後の観測によって放物線のシェイプがハッキリするならば観測誤差の範囲なのかわかるかも知れません。

ここでこの2つの連星の研究について少しですが報告します。

V1073 Herは2006年頃から多くの観測と解析があります。この接触連星は短周期ですので観測例が多く、同様に解析も多いのですが、結果が様々で定まった感じではありません。

2014年に初めてO-Cから第三体検出の報告があります。第三体は褐色矮星で<0.003dの正弦波変動で11.25年の周期としています。

最後のペーパーはXiao-man Tian et. al., 2017です。fill out=0.124と浅い接触としています。周期変化については長期的な連続的な減少と周期的な変動があるとしています。連続減少によりdeep contact stageに進化しているとの事です。周期的な変動は周期=82.7年で振幅=0.028日としています。これは2014年のものと異なっています。周期的変化は第三体か両成分星の磁気活動ではないかとしています。

このように、V1073 Herはまだ解析が十分では無さそうです。どの観測も測光が不十分に見えます。これが原因で解析結果が定まらないのかも知れません。

V1097 HerはROTES1で発見された変光星です。発見以降はBBSAGの極小観測が多いです。2006年に78th name-listでV1097 Herとなりました。この系の解析研究は2019年のIBVS6270があります。O-Cは二次関数で周期増加中としています。分光もされていて成分星の分光型の検討や質量比を求めたりしています。きれいな光度曲線が得られています。黒点も配置して解析されています。解析はBinary Maker3を使用されています。(下図参照)

今回注目した2星のO-Cの変化は今後の観測によってこの先の変化がわかりますので更なる観測に期待したいです。


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